WJのネタバレあり。
合同誌のサンプルを上げておきますね!
ぱちぱち拍手有難うございます!
いっぱい元気貰いました!!
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いっぱい元気貰いました!!
ちらっとベッドサイドに置かれた目覚まし時計を流し見る。神経質なほどジョットは十分に一回の割合で、何度も時間を確認した。
時計の針は、すでに六時を回っていた。
(――遅いな…)
とうに学校は終わっているはずなのに、ここのところずっとそうだ。綱吉の帰りが遅い。特に部活に参加しているわけでもないのに、帰りが遅い日が続くのはなぜなのか。
以前問いただしたときは曖昧に言葉を濁してごまかすように笑っていたから、よほど話しづらいことなのかと思って強く聞き出せなかった。けれど、気になる。
自分の知らないところで、なにをしているのか。
学業を終えたのなら、付き添うこともできるのに。有り体に言えば、暇なのだ。綱吉の帰りを待つこの時間は暇で、なにかあったのではないかと不安で、ほんの少しだけ心細くなる。
ふっと小さく息を吐いて、それまで目にしていた本をパタンと閉じた。
落ち着かない。
はやく会いたい。
そばにいたい。
触れていたい。
湧水のように膨れ上がる感情を抑えるように、ジョットは階下へと降りていった。
居間には干したての洗濯物をたたむ奈々がいた。ドアを横切ったジョットに気づくと、奈々はふわりと微笑みかける。
「あら、ジョットくん。出かけるの?」
「いや…奈々、綱吉はまだ帰ってこないのか?」
「ツナ? ああ、そういえば、今日もまたお店に寄ってから帰るって言ってたわ。最近帰りが遅いのはそのせいね」
「店…?」
「ええ。プランツドールのお店よ」
(なぜ、そんなところに…? ミルクはまだ切れてないし、服だって…)
わざわざ通いつめる理由がわからないと、ジョットは眉を寄せていぶかしげに表情を曇らせた。
なにか理由があるのだろうか。自分に隠し通すほどのなにかが?
――それはそれで、面白くなかった。
「あらやだ…あの子、ジョットくんにはなにも言ってなかったのね…私ったら余計なことを言っちゃったのかしら」
困ったように頬に手を当てて、眉根を寄せる奈々に、ジョットはゆるく頭を振る。
「いや。教えてくれて助かった」
「そう? ツナのこと怒らないでちょうだいね。ジョットくんのために、あの子、頑張ってるみたいだから」
「……私のため?」
それと店に通いつめることがどう繋がるというのだろう。
ただ、そばにいてほしいと一番はそれを望んでいるのに、学校という長い拘束時間から解放されたわずかな時間でさえ削られて。
綱吉がなにを考えているのか、さっぱり理解できない。不満さえあった。
「ふふっ…それは私の口からは言えないの。ごめんなさいね……でも、本当にツナはジョットくんが来てから、変わったわ」
「そうなのか?」
「ええ。あの子、いままで頑張るなんて絶対言わなかったのに、ジョットくんのことに関してだけ、あんなに熱心になれるんだもの」
奈々が語るのは、ジョットの知らない綱吉の一面。出会う前の綱吉なのだろう。そういえば、店主にもいろいろ言われていた記憶が頭の片隅にあった。
(出会う前の、綱吉か…)
気にならないと言えば、うそになる。それまでの綱吉がどんな生活を送っていたのか、どんなことを思って日々を過ごしていたのか――ジョットが出会ったときの綱吉は、自分に自信が持てなくて、どこかなげやりで、それでも礼儀正しく素直で、ひとの痛みがわかる優しい子どもだった。
奈々の言う過去の綱吉の姿は知らないけれど。
(それでも、きっと…いまとそう変わらないんだろうな)
目を覚ました瞬間、暗闇の中にやさしい光を見たような気がした。いたわって包み込むようなそれは、ふわふわとあたたかくて、触れたいと思った先に、綱吉がいた。
今でも覚えている。
はじめて綱吉に出会ったときの大切な思い出。
こうして綱吉を思うだけで胸はあたかかくなって、同時に締め付けられるような甘い痛みを感じる。そばにいないと不安で、この目は綱吉の姿を追うように探してしまう。
それはいままで感じたこともない不思議な感覚だった。でも、そんな感覚さえも大切にしたいと思う。綱吉のことならすべて。
この身はもとより。
持ち主を綱吉と定めた瞬間から、ジョットには綱吉しかないのだ。
「ただいまー!」
バタンッと扉の閉じる音に続いて、ドタドタッと慌ただしく通路をかける音が響いた。
(以下、本文に続く。)
時計の針は、すでに六時を回っていた。
(――遅いな…)
とうに学校は終わっているはずなのに、ここのところずっとそうだ。綱吉の帰りが遅い。特に部活に参加しているわけでもないのに、帰りが遅い日が続くのはなぜなのか。
以前問いただしたときは曖昧に言葉を濁してごまかすように笑っていたから、よほど話しづらいことなのかと思って強く聞き出せなかった。けれど、気になる。
自分の知らないところで、なにをしているのか。
学業を終えたのなら、付き添うこともできるのに。有り体に言えば、暇なのだ。綱吉の帰りを待つこの時間は暇で、なにかあったのではないかと不安で、ほんの少しだけ心細くなる。
ふっと小さく息を吐いて、それまで目にしていた本をパタンと閉じた。
落ち着かない。
はやく会いたい。
そばにいたい。
触れていたい。
湧水のように膨れ上がる感情を抑えるように、ジョットは階下へと降りていった。
居間には干したての洗濯物をたたむ奈々がいた。ドアを横切ったジョットに気づくと、奈々はふわりと微笑みかける。
「あら、ジョットくん。出かけるの?」
「いや…奈々、綱吉はまだ帰ってこないのか?」
「ツナ? ああ、そういえば、今日もまたお店に寄ってから帰るって言ってたわ。最近帰りが遅いのはそのせいね」
「店…?」
「ええ。プランツドールのお店よ」
(なぜ、そんなところに…? ミルクはまだ切れてないし、服だって…)
わざわざ通いつめる理由がわからないと、ジョットは眉を寄せていぶかしげに表情を曇らせた。
なにか理由があるのだろうか。自分に隠し通すほどのなにかが?
――それはそれで、面白くなかった。
「あらやだ…あの子、ジョットくんにはなにも言ってなかったのね…私ったら余計なことを言っちゃったのかしら」
困ったように頬に手を当てて、眉根を寄せる奈々に、ジョットはゆるく頭を振る。
「いや。教えてくれて助かった」
「そう? ツナのこと怒らないでちょうだいね。ジョットくんのために、あの子、頑張ってるみたいだから」
「……私のため?」
それと店に通いつめることがどう繋がるというのだろう。
ただ、そばにいてほしいと一番はそれを望んでいるのに、学校という長い拘束時間から解放されたわずかな時間でさえ削られて。
綱吉がなにを考えているのか、さっぱり理解できない。不満さえあった。
「ふふっ…それは私の口からは言えないの。ごめんなさいね……でも、本当にツナはジョットくんが来てから、変わったわ」
「そうなのか?」
「ええ。あの子、いままで頑張るなんて絶対言わなかったのに、ジョットくんのことに関してだけ、あんなに熱心になれるんだもの」
奈々が語るのは、ジョットの知らない綱吉の一面。出会う前の綱吉なのだろう。そういえば、店主にもいろいろ言われていた記憶が頭の片隅にあった。
(出会う前の、綱吉か…)
気にならないと言えば、うそになる。それまでの綱吉がどんな生活を送っていたのか、どんなことを思って日々を過ごしていたのか――ジョットが出会ったときの綱吉は、自分に自信が持てなくて、どこかなげやりで、それでも礼儀正しく素直で、ひとの痛みがわかる優しい子どもだった。
奈々の言う過去の綱吉の姿は知らないけれど。
(それでも、きっと…いまとそう変わらないんだろうな)
目を覚ました瞬間、暗闇の中にやさしい光を見たような気がした。いたわって包み込むようなそれは、ふわふわとあたたかくて、触れたいと思った先に、綱吉がいた。
今でも覚えている。
はじめて綱吉に出会ったときの大切な思い出。
こうして綱吉を思うだけで胸はあたかかくなって、同時に締め付けられるような甘い痛みを感じる。そばにいないと不安で、この目は綱吉の姿を追うように探してしまう。
それはいままで感じたこともない不思議な感覚だった。でも、そんな感覚さえも大切にしたいと思う。綱吉のことならすべて。
この身はもとより。
持ち主を綱吉と定めた瞬間から、ジョットには綱吉しかないのだ。
「ただいまー!」
バタンッと扉の閉じる音に続いて、ドタドタッと慌ただしく通路をかける音が響いた。
(以下、本文に続く。)
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