WJのネタバレあり。
昨日もこそっとお邪魔してました。楽しかった…!初ツナのお話すると元気をいっぱいもらえます。
ぱちぱち拍手有難うございますーっ!
原稿の合い間にパチパチ打っていた話が出来上がったので、先にこちらでupしますね。
同居物語(頑張れ初代!!シリーズ)の続きになります。
ぱちぱち拍手有難うございますーっ!
原稿の合い間にパチパチ打っていた話が出来上がったので、先にこちらでupしますね。
同居物語(頑張れ初代!!シリーズ)の続きになります。
▼同居物語 2
その人をちゃんと認識したのは、たぶん幼稚園に通っていたときくらい小さいころで、幼心ながらもきれいだなぁ…とそんなことを思った。
きらきらと太陽の光に反射される砂金の髪はまるで宝石みたいに輝いていて、
「ツナ」
「ツナ、こちらにおいで」
呼び掛ける声は慈愛に満ちていて、そばにいるとほっと息を吐いて安心した。だいすきだった。
それは今でも変わらない。
話は変わるが、綱吉の周りはとかくきれいと称させるものが多い。異邦人のジョットはさることながら、従姉妹のダニエラも美貌ならテレビでよく見る女優にも負けてないほどの美女と言える。まるでファッションモデルのようにスタイルがよく、漆黒に濡れたゆるいウェーブかかった髪に、整った目鼻立ち、ふっくらとした唇にアクセントなのか、頬に蔦花の刺繍が刻み込まれて、それがどこかエキゾチックささえ感じさせるのだ。
(いつ見ても、きれいなんだよなぁ…)
綱吉を我が妹のようにかわいがってくれるダニエラは、綱吉にとっては自慢のお姉さんなのである。
そんな彼女が、今日突然の来訪。
「デートしましょう?」
とにっこり微笑まれてしまえば、断る男はまずいない――と綱吉は思う。宣告された綱吉もまた、ふたつ返事で力強く頷いて了承の意を示した。
もとより今日はなにも予定がなくて暇だったので、断る道理もなかったのだ。
そんなこんなで、行き着いた先がラ・ナミモリーヌ。
並盛町のなかでも一位二位を争うほどケーキがおいしいと女性に評判のカフェだ。今日は休日ということもあってか、いつも以上に店は賑わいを見せていた。
ひとまずケーキセットを頼んで、ゆっくりと腰を落ち着かせる。
手持ちぶさたにじっと窓際を見ていると、ダニエラから声がかかった。
「久しぶりね。元気そうでなによりだわ」
「うん。ダニエラさんは?」
「見ての通りよ。あの人も元気そうね」
「……うん」
ダニエラの言うあの人、とはジョットのことだ。無病息災という点においては、なんら変わりない。
けれど、どうしてか。
今朝のジョットの様子を思い浮かべて、綱吉は歯切りの悪い返事しか返せなかった。
特に病気だとかケガをしているわけでもないのに、ジョットの様子はおかしいように思う。
最近、なんだかよそよそしい気がするのだ。以前はそんなことはなかったのに、ジョットの間で見えない壁を感じるようになった。
それが、おもしろくない。
むぅ、と頬をぷくっと膨らませると、正面からつっつく指のせいでぷしゅぅと気の抜けた音がもれた。
「ツナったら、どうしたの? 膨れっ面もかわいいけど、笑ってるほうがずっとかわいいのに」
「…ダニエラさん」
「なにかあった?」
ゆったりと落ち着いた声にこくんと頷いて返した。
まるで幼子をあやすかのように頭を撫でられると今まで胸に抱いていた不平不満もどこかに吹き飛んでしまいそうだ。
いつもならそうだった。けれど、最近になって気のせいとは思えないジョットの態度に、綱吉はいよいよをもってして深刻な問題に直面している。
ジョットとの間に感じるたしかな壁。家族のように、兄妹のようにして、ずっと一緒にいた。それは今でも変わらないのに、ジョットだけが変わってしまったように思う。
不平不満というよりは、どうして、という気持ちのほうが大きい。
「もう少し、自覚を持ったほうがいい…お前は女の子なのだから」
その言葉を告げるジョットは、痛みを耐えるように苦しそうに笑っていた。
違う。そんな顔をさせたいんじゃない。
ただ、前みたいに一緒に、と思っているだけだ。望んでいるのはそれだけ。なのに、どうしてか現実はうまくいかないものである。
ふ、と小さく息を吐いて、クリームソーダにのるアイスをふにふにとスプーンで突っついた。
「オレ、男だったらよかったのかな…」
ジョットは「女の子だから」とよく口にするから、もしも、男として生まれたのなら、今の壁はうまれなかったのかもしれない。
「それはどういう意味?」
「えっ…」
いつのまにか頭を撫でる手の動きは止まって、目の前にいるダニエラの表情はかたく引き締まっていた。
ごごご…と耳に聞こえてきそうな気迫は、間違いなく彼女が怒っている証拠である。
(お、オレ…なんか怒らせたーっ!?)
なにかうっかり失言してしまっただろうか、と数分前の発言を省みるが、彼女の逆鱗に触れそうなものに心当たりはない。
「どうしてそう思うの?」
こんなにかわいいのに、まぁ男の子でもかわいいんだろうけど、もったいないわ!と綱吉の跳ねっけの髪を指でくるくると絡めるダニエラは、綱吉の言葉に心底不満のようである。
「女だからって…」
「うん?」
「女の子だからって、ジョットさんに言われたから…最近、なんかよそよそしいし…」
何度も今朝のことを思い返す。あからさまに部屋に来るなとは言わないが、あの言葉はそういう意味だ。
それがくやしい。
きゅっと眉を寄せる。ちくりと針でつつかれたように胸は痛んで、苦しくて。
男だったらよかったのかな、なんて安直な考えが離れない。
「……ツナ」
「オレ、なんか嫌われるようなことしちゃったのかな…」
「そんなことないわ。大丈夫よ。あの人はツナのことを大切に思ってる」
「じゃあ、なんであんなこと…」
「だからこそなの」
ふと浮かんだダニエラの真剣な眼差しに、綱吉はぱちぱちと目を瞬かせた。
「え?」
「大切だから、そうするしかないんでしょうね…」
ひとり納得したかのようにダニエラは、はぁ、と嘆息した。
(つづく)
その人をちゃんと認識したのは、たぶん幼稚園に通っていたときくらい小さいころで、幼心ながらもきれいだなぁ…とそんなことを思った。
きらきらと太陽の光に反射される砂金の髪はまるで宝石みたいに輝いていて、
「ツナ」
「ツナ、こちらにおいで」
呼び掛ける声は慈愛に満ちていて、そばにいるとほっと息を吐いて安心した。だいすきだった。
それは今でも変わらない。
話は変わるが、綱吉の周りはとかくきれいと称させるものが多い。異邦人のジョットはさることながら、従姉妹のダニエラも美貌ならテレビでよく見る女優にも負けてないほどの美女と言える。まるでファッションモデルのようにスタイルがよく、漆黒に濡れたゆるいウェーブかかった髪に、整った目鼻立ち、ふっくらとした唇にアクセントなのか、頬に蔦花の刺繍が刻み込まれて、それがどこかエキゾチックささえ感じさせるのだ。
(いつ見ても、きれいなんだよなぁ…)
綱吉を我が妹のようにかわいがってくれるダニエラは、綱吉にとっては自慢のお姉さんなのである。
そんな彼女が、今日突然の来訪。
「デートしましょう?」
とにっこり微笑まれてしまえば、断る男はまずいない――と綱吉は思う。宣告された綱吉もまた、ふたつ返事で力強く頷いて了承の意を示した。
もとより今日はなにも予定がなくて暇だったので、断る道理もなかったのだ。
そんなこんなで、行き着いた先がラ・ナミモリーヌ。
並盛町のなかでも一位二位を争うほどケーキがおいしいと女性に評判のカフェだ。今日は休日ということもあってか、いつも以上に店は賑わいを見せていた。
ひとまずケーキセットを頼んで、ゆっくりと腰を落ち着かせる。
手持ちぶさたにじっと窓際を見ていると、ダニエラから声がかかった。
「久しぶりね。元気そうでなによりだわ」
「うん。ダニエラさんは?」
「見ての通りよ。あの人も元気そうね」
「……うん」
ダニエラの言うあの人、とはジョットのことだ。無病息災という点においては、なんら変わりない。
けれど、どうしてか。
今朝のジョットの様子を思い浮かべて、綱吉は歯切りの悪い返事しか返せなかった。
特に病気だとかケガをしているわけでもないのに、ジョットの様子はおかしいように思う。
最近、なんだかよそよそしい気がするのだ。以前はそんなことはなかったのに、ジョットの間で見えない壁を感じるようになった。
それが、おもしろくない。
むぅ、と頬をぷくっと膨らませると、正面からつっつく指のせいでぷしゅぅと気の抜けた音がもれた。
「ツナったら、どうしたの? 膨れっ面もかわいいけど、笑ってるほうがずっとかわいいのに」
「…ダニエラさん」
「なにかあった?」
ゆったりと落ち着いた声にこくんと頷いて返した。
まるで幼子をあやすかのように頭を撫でられると今まで胸に抱いていた不平不満もどこかに吹き飛んでしまいそうだ。
いつもならそうだった。けれど、最近になって気のせいとは思えないジョットの態度に、綱吉はいよいよをもってして深刻な問題に直面している。
ジョットとの間に感じるたしかな壁。家族のように、兄妹のようにして、ずっと一緒にいた。それは今でも変わらないのに、ジョットだけが変わってしまったように思う。
不平不満というよりは、どうして、という気持ちのほうが大きい。
「もう少し、自覚を持ったほうがいい…お前は女の子なのだから」
その言葉を告げるジョットは、痛みを耐えるように苦しそうに笑っていた。
違う。そんな顔をさせたいんじゃない。
ただ、前みたいに一緒に、と思っているだけだ。望んでいるのはそれだけ。なのに、どうしてか現実はうまくいかないものである。
ふ、と小さく息を吐いて、クリームソーダにのるアイスをふにふにとスプーンで突っついた。
「オレ、男だったらよかったのかな…」
ジョットは「女の子だから」とよく口にするから、もしも、男として生まれたのなら、今の壁はうまれなかったのかもしれない。
「それはどういう意味?」
「えっ…」
いつのまにか頭を撫でる手の動きは止まって、目の前にいるダニエラの表情はかたく引き締まっていた。
ごごご…と耳に聞こえてきそうな気迫は、間違いなく彼女が怒っている証拠である。
(お、オレ…なんか怒らせたーっ!?)
なにかうっかり失言してしまっただろうか、と数分前の発言を省みるが、彼女の逆鱗に触れそうなものに心当たりはない。
「どうしてそう思うの?」
こんなにかわいいのに、まぁ男の子でもかわいいんだろうけど、もったいないわ!と綱吉の跳ねっけの髪を指でくるくると絡めるダニエラは、綱吉の言葉に心底不満のようである。
「女だからって…」
「うん?」
「女の子だからって、ジョットさんに言われたから…最近、なんかよそよそしいし…」
何度も今朝のことを思い返す。あからさまに部屋に来るなとは言わないが、あの言葉はそういう意味だ。
それがくやしい。
きゅっと眉を寄せる。ちくりと針でつつかれたように胸は痛んで、苦しくて。
男だったらよかったのかな、なんて安直な考えが離れない。
「……ツナ」
「オレ、なんか嫌われるようなことしちゃったのかな…」
「そんなことないわ。大丈夫よ。あの人はツナのことを大切に思ってる」
「じゃあ、なんであんなこと…」
「だからこそなの」
ふと浮かんだダニエラの真剣な眼差しに、綱吉はぱちぱちと目を瞬かせた。
「え?」
「大切だから、そうするしかないんでしょうね…」
ひとり納得したかのようにダニエラは、はぁ、と嘆息した。
(つづく)
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