WJのネタバレあり。
お誕生日おめでとうございます!
どうか素敵な一年でありますように…!
まずは一個目、ひのさん用の白ツナSSです。
どうか素敵な一年でありますように…!
まずは一個目、ひのさん用の白ツナSSです。
――なにも無くなった。
白蘭に残ったのは、『敗北』という現実だけだ。
八兆分の世界で上位個体だった自分が消えれば、並行世界に存在していた自分も消えて無くなる。トゥリニセッテを集めることも、新世界の創造を描いていた嘆願も結局叶わなかった。
八兆分を束ねた自分でも、『沢田綱吉』という個体には敵わなかったのだ。
(さすが、かな…僕のたったひとりのプレイヤー…他の綱吉クンはどうってことなかったけど、あの綱吉クンだけは僕に対等だった…僕と渡り合える僕だけのプレイヤーだった)
自分は負けてしまった。
もうこれで願いは叶わない。
けれど、それでも白蘭の胸に去来するのは、満ち足りた充足感だった。
なにもかも気持ち悪くて、薄っぺらくて、背景にしか見えなかったのに、彼だけは違ったらしい。
その理由は、あの澄んだ琥珀の瞳を見て思い知らされた。
彼はこんなに気持ち悪い世界で、もがき、苦しみながらも、精一杯生きていた。
自分と対等に立つ『プレイヤー』にも関わらず、自分とは違って、痛みを知り、孤独を知り、情に溢れ、非情な世界に身を任せて、それでも精一杯生きていたのだ。
だから、はじめて。
ソレを美しいと思えた。
心が打ち震えるような、今までにない感覚。
はじめてだった。
はじめて、人を美しいものだと思えた。
彼だけが、沢田綱吉だけが、白蘭にとって特別になり得たのだ。
(あーあ、もっと早く知っていればよかったなぁ…もっと早く彼に逢うのを試していれば――いや、そんなことはもうどうでもいっか)
今になっては、そんなことを考えても無駄なことだ。
たぶん、この世界の、この状況で、自分でしか出逢えなかった沢田綱吉だけが白蘭にとっての特別だったのだから。
(――僕の完敗だよ、綱吉クン…)
この世界も捨てたものではないな、とはじめて思えた。
そんな存在に感謝と敬意を表し、憧憬の眼差しを彼に向けて、
白蘭は最期に澄みきった、透明で綺麗な笑みを浮かべて、
世界から消えていった。
『バカだな、お前。もっとやり方ってもんがあるだろ…?』
ふと、世界から乖離される前に、殺し損ねた十年後の彼の声が聞こえたような気がした。
『オレ、お前のこと嫌いじゃなかったよ。だからさ、今度は別の出会い方をしような』
暖かな、白い光に包まれる。
白蘭の脳裏に最期に思い浮かんだのは、罠であると知っていながらも無防備にひとりでやってきた沢田綱吉の姿だった。
白蘭に残ったのは、『敗北』という現実だけだ。
八兆分の世界で上位個体だった自分が消えれば、並行世界に存在していた自分も消えて無くなる。トゥリニセッテを集めることも、新世界の創造を描いていた嘆願も結局叶わなかった。
八兆分を束ねた自分でも、『沢田綱吉』という個体には敵わなかったのだ。
(さすが、かな…僕のたったひとりのプレイヤー…他の綱吉クンはどうってことなかったけど、あの綱吉クンだけは僕に対等だった…僕と渡り合える僕だけのプレイヤーだった)
自分は負けてしまった。
もうこれで願いは叶わない。
けれど、それでも白蘭の胸に去来するのは、満ち足りた充足感だった。
なにもかも気持ち悪くて、薄っぺらくて、背景にしか見えなかったのに、彼だけは違ったらしい。
その理由は、あの澄んだ琥珀の瞳を見て思い知らされた。
彼はこんなに気持ち悪い世界で、もがき、苦しみながらも、精一杯生きていた。
自分と対等に立つ『プレイヤー』にも関わらず、自分とは違って、痛みを知り、孤独を知り、情に溢れ、非情な世界に身を任せて、それでも精一杯生きていたのだ。
だから、はじめて。
ソレを美しいと思えた。
心が打ち震えるような、今までにない感覚。
はじめてだった。
はじめて、人を美しいものだと思えた。
彼だけが、沢田綱吉だけが、白蘭にとって特別になり得たのだ。
(あーあ、もっと早く知っていればよかったなぁ…もっと早く彼に逢うのを試していれば――いや、そんなことはもうどうでもいっか)
今になっては、そんなことを考えても無駄なことだ。
たぶん、この世界の、この状況で、自分でしか出逢えなかった沢田綱吉だけが白蘭にとっての特別だったのだから。
(――僕の完敗だよ、綱吉クン…)
この世界も捨てたものではないな、とはじめて思えた。
そんな存在に感謝と敬意を表し、憧憬の眼差しを彼に向けて、
白蘭は最期に澄みきった、透明で綺麗な笑みを浮かべて、
世界から消えていった。
『バカだな、お前。もっとやり方ってもんがあるだろ…?』
ふと、世界から乖離される前に、殺し損ねた十年後の彼の声が聞こえたような気がした。
『オレ、お前のこと嫌いじゃなかったよ。だからさ、今度は別の出会い方をしような』
暖かな、白い光に包まれる。
白蘭の脳裏に最期に思い浮かんだのは、罠であると知っていながらも無防備にひとりでやってきた沢田綱吉の姿だった。
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