WJのネタバレあり。
狭衣さん、お誕生日おめでとうございます!
どうか素敵な一年でありますように…!
ぎりぎりですが、 宜しければ納めください。
どうか素敵な一年でありますように…!
ぎりぎりですが、 宜しければ納めください。
呼び出されたのは、継承の時と同じこの世でもあの世でもない、綱吉の知らない亜空間――おそらくボンゴレリングの力によって形成された精神世界だろう。
透き通るほど深い青空の下、ジョットは継承のときに座っていた豪奢な玉座に足を組んで座り、ぽつんっと所在なさげに突っ立っている綱吉に優しく言った。
おいで、と。
(え、えーっと…)
「こちらにおいで、デーチモ」
両手を広げながら、ジョットは綱吉が来るのを座って待っている。
警戒を露わにした表情は強張り、おずおずとした様子でゆっくりと足を踏みしめた。
あと一歩のところで、綱吉が足を止めるとジョットはにこりと穏やかな笑みを浮かべて、綱吉の腕を引き、自分の膝の上へと座らせた――所謂膝抱っこだ。
「え、なっなあ!?」
「ん、少し…軽くないか? ちゃんと食べているのか?」
ぐるりと腰を回した腕が綱吉の腰をしっかりと掴み、逃げを許さない。
じたばたと赴くままに腕を動かし、ジョットを押しのけたい気持ちを綱吉は何とか押し留めた。下手に暴れたら、ジョットに傷つけるかもしれないと恐れたからである。
綱吉は観念したかのようにぐったりと体を弛緩させ、顔を俯かせた。
これは、なんだか妙に落ち着かない。
継承時の印象とは異なる、もう一つのジョットの姿を目にした今でも、綱吉からすればジョットは初代ボンゴレボスであり、自分のひいひいひいおじいさんであり、遠い存在のように思えたのだ。
こんなふうに密着して触れ合うような、そんな想像などしたこともなかったのに。
「腕も細いな…」
すっと綱吉の腕をゆるく手に取り、手首を指の輪で絡めた。
ジョットの指では、一間接分余るほど綱吉の手首は細い。それに、ジョットは心配げに眉を寄せて、綱吉の耳元に唇を寄せて囁いた。
「ちゃんと、オレの話を聞いているのか?」
「ひっ! あ、はい! ちゃんと食べてます…っていうか、もう離して下さいっ!!」
この体勢は恥ずかしくて、居心地悪くて、そわそわと胸のあたりがざわついて落ち着かなかった。
さっと頬を薄紅に染めて、綱吉はじっとジョットを見上げて訴える。
だが。
「別にいいだろう。オレはまだこうしていたい…こうしてお前にずっと触れていたい…デーチモ、お前はオレの些細な幸福さえ拒むのか?」
「う…」
ゆるりと首をかしげながら、ジョットの表情に寂しげな色が滲み、綱吉は言葉を詰まらせた。
時折見せるその表情に、綱吉は弱かった。
(なんだかオレ、流されてるよなぁ…)
そんなふうに言われたら、そんな表情をされてしまったら、嫌だなんて言えない。ずるい。それをわかって、きっと彼は言っている。
でも、それをわかっていても、綱吉は拒むことはできなかった。
居心地悪いし、そわそわして落ち着かないけれど、でも伝わる体温は暖かく、抱きしめてくれる腕は暖かくて心地よかったから、綱吉は顔を正面に戻し、そっとジョットに身を預けた。
(オレって、初代にとってなんなんだろ…)
こうして気遣いを見せるのは、やはり継承者だからなのだろうか。
彼は、言った。
自分だけが、彼の意志を継ぐ真の後継者なのだと。
それならやはり、こうして心配してくれるのも、すべて自分が継承者だからで、それ以上の意味など無い。
そう考えて、綱吉はもやもやと判然としない思いが胸の内にじわりと浸透していくのを感じ取った。
「ねぇ、初代…初代にとって、オレって――」
自然と口にしていた言葉を綱吉は寸でのところで飲み込んで、ふるりと首を打ち振るった。
「いえ、やっぱりなんでも――」
「綱吉は、ボンゴレにとって継承者だ…そして、オレにとって唯一の、真の後継者でもある」
――ああ、やっぱり。
胸の内に襲いかかった落胆に、綱吉は失望の色を瞳に宿した。
じわりと浮かび上がりそうになる涙をぐっとこらえて、ふと頬に添えられた手のひらに顔を上げる。
かちあったジョットの瞳は、今まで見たことないほど優しい色をしていて、
「――愛しているよ、綱吉」
とろりと蜜のように甘く、艶やかな声で、ジョットは微笑みながら囁いた。
透き通るほど深い青空の下、ジョットは継承のときに座っていた豪奢な玉座に足を組んで座り、ぽつんっと所在なさげに突っ立っている綱吉に優しく言った。
おいで、と。
(え、えーっと…)
「こちらにおいで、デーチモ」
両手を広げながら、ジョットは綱吉が来るのを座って待っている。
警戒を露わにした表情は強張り、おずおずとした様子でゆっくりと足を踏みしめた。
あと一歩のところで、綱吉が足を止めるとジョットはにこりと穏やかな笑みを浮かべて、綱吉の腕を引き、自分の膝の上へと座らせた――所謂膝抱っこだ。
「え、なっなあ!?」
「ん、少し…軽くないか? ちゃんと食べているのか?」
ぐるりと腰を回した腕が綱吉の腰をしっかりと掴み、逃げを許さない。
じたばたと赴くままに腕を動かし、ジョットを押しのけたい気持ちを綱吉は何とか押し留めた。下手に暴れたら、ジョットに傷つけるかもしれないと恐れたからである。
綱吉は観念したかのようにぐったりと体を弛緩させ、顔を俯かせた。
これは、なんだか妙に落ち着かない。
継承時の印象とは異なる、もう一つのジョットの姿を目にした今でも、綱吉からすればジョットは初代ボンゴレボスであり、自分のひいひいひいおじいさんであり、遠い存在のように思えたのだ。
こんなふうに密着して触れ合うような、そんな想像などしたこともなかったのに。
「腕も細いな…」
すっと綱吉の腕をゆるく手に取り、手首を指の輪で絡めた。
ジョットの指では、一間接分余るほど綱吉の手首は細い。それに、ジョットは心配げに眉を寄せて、綱吉の耳元に唇を寄せて囁いた。
「ちゃんと、オレの話を聞いているのか?」
「ひっ! あ、はい! ちゃんと食べてます…っていうか、もう離して下さいっ!!」
この体勢は恥ずかしくて、居心地悪くて、そわそわと胸のあたりがざわついて落ち着かなかった。
さっと頬を薄紅に染めて、綱吉はじっとジョットを見上げて訴える。
だが。
「別にいいだろう。オレはまだこうしていたい…こうしてお前にずっと触れていたい…デーチモ、お前はオレの些細な幸福さえ拒むのか?」
「う…」
ゆるりと首をかしげながら、ジョットの表情に寂しげな色が滲み、綱吉は言葉を詰まらせた。
時折見せるその表情に、綱吉は弱かった。
(なんだかオレ、流されてるよなぁ…)
そんなふうに言われたら、そんな表情をされてしまったら、嫌だなんて言えない。ずるい。それをわかって、きっと彼は言っている。
でも、それをわかっていても、綱吉は拒むことはできなかった。
居心地悪いし、そわそわして落ち着かないけれど、でも伝わる体温は暖かく、抱きしめてくれる腕は暖かくて心地よかったから、綱吉は顔を正面に戻し、そっとジョットに身を預けた。
(オレって、初代にとってなんなんだろ…)
こうして気遣いを見せるのは、やはり継承者だからなのだろうか。
彼は、言った。
自分だけが、彼の意志を継ぐ真の後継者なのだと。
それならやはり、こうして心配してくれるのも、すべて自分が継承者だからで、それ以上の意味など無い。
そう考えて、綱吉はもやもやと判然としない思いが胸の内にじわりと浸透していくのを感じ取った。
「ねぇ、初代…初代にとって、オレって――」
自然と口にしていた言葉を綱吉は寸でのところで飲み込んで、ふるりと首を打ち振るった。
「いえ、やっぱりなんでも――」
「綱吉は、ボンゴレにとって継承者だ…そして、オレにとって唯一の、真の後継者でもある」
――ああ、やっぱり。
胸の内に襲いかかった落胆に、綱吉は失望の色を瞳に宿した。
じわりと浮かび上がりそうになる涙をぐっとこらえて、ふと頬に添えられた手のひらに顔を上げる。
かちあったジョットの瞳は、今まで見たことないほど優しい色をしていて、
「――愛しているよ、綱吉」
とろりと蜜のように甘く、艶やかな声で、ジョットは微笑みながら囁いた。
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